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IgG関連疾患とは
IgG4関連疾患(IgG4-related disease)

歴史と概要

 IgG4関連疾患(IgG4-related disease: IgG4-RD)とは、血清IgG4の上昇、病変部組織へのIgG4陽性形質細胞浸潤と線維化を特徴とする全身性疾患であり、21世紀に発見された新たな疾患概念として注目されている。

 1991年、都立駒込病院のKawaguchi Kらは、膵癌の診断にて切除された検体において、形質細胞の浸潤と著しい線維性硬化を特徴とする像を報告し、Lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitisと呼称した。1995年、東京女子医大のYoshida Kらは、膵炎の中でステロイドの著効する自己免疫性膵炎の概念を発表した。2001年、信州大のHamano, Kawaらは、自己免疫性膵炎患者において高IgG4血症が認められる事を報告し、2002年、病変組織におけるIgG4陽性形質細胞浸潤を報告した。

 一方、Mikulicz病は、1888年、ポーランドの外科医Mikulicz Jが両側の涙腺、耳下腺、顎下腺が無痛性に腫脹した男性症例を報告した。1930年、スウェーデンの眼科医Sjögren Hが、関節炎、乾燥性角結膜炎を伴った女性症例を報告し、この特徴を有する症例はSjögren症候群と呼ばれるようになった。1953年、病理学者のMorgan WSとCastleman Bが18例のMikulicz病を病理学的に検討し、Mikulicz病はSjögren症候群の一表現形であると報告し、以後欧米ではMikulicz病の報告がみられなくなった。 しかし日本では、耳鼻科の今野らを中心にMikulicz病とSjögren症候群は異なる疾患であるという議論がなされていた。

 2004年、Yamamoto Mらは、Mikulicz病患者において高IgG4血症と組織でのFas発現の低下を報告し、Sjögren症候群とは異なる病態であることを示唆した。同様な報告も相次ぎ、日本シェーグレン症候群研究会(現:日本シェーグレン症候群学会)の一部会としてIgG4+ MOLPS(multi-organ lymphoproliferative syndrome)/Mikulicz病検討会が設立され、2008年、同学会において「IgG4関連ミクリッツ病診断基準」が作成された。
 しかし研究者の間で、自己免疫性膵炎とMikulicz病は、臨床的にも病理組織学的にも共通の特徴を持つことが指摘され、これまで臓器毎に検討されてきた症例を、IgG4という視点から、涙腺、唾液腺、甲状腺、肺、膵臓、胆管、腎臓、大動脈、前立腺、皮膚、リンパ節、などの全身臓器に生じうる一つの疾患概念と捉えるようになった。
 2009年より、厚生労働省難治性疾患対策事業「IgG4関連全身性硬化性疾患の診断法と治療法の開発に関する研究」班(岡崎班)と「新規疾患、IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)の確立のための研究」班(梅原班)が、本疾患に関する疾患概念を統一して「IgG4関連疾患IgG4-related disease」と命名し、診断基準を作成する作業に着手した。
 2011年に、本邦より「IgG4関連疾患包括診断基準2011」が提唱された。また同時期にボストンにおいて国際シンポジウムが開催され、本邦および欧米の研究者により、IgG4関連疾患に関するコンセンサスが協議された。

IgG4の役割とIgG4関連疾患の病態

 IgG4は、IgGは、IgG1,G2,G3,G4の4つのサブタイプから構成される免疫グロブリンであり、健常人では全IgGの6%以下(1-120mg/dl)を占める最も少ない蛋白である。

 構造的には、IgG4のFc領域は、補体(C1q)やFcγ受容体への結合が弱く、免疫活性化における役割は少ないとされが、形質細胞より分泌された後、Fab領域が他のFabと交換され、1分子で異なった2つの抗原を認識(bispecific Ab)できるようになるという特徴をもつ。

 IgG4は、抗原刺激下で、主にアレルギー反応に関与するTh2タイプのサイトカインであるIL4、IL-13によって産生が誘導される。臨床的には寄生虫感染症、天疱瘡、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの疾患で上昇することが知られている。特にアレルギー疾患においては、IgG4は抗原によって誘導されるIgE抗体の遮断抗体として作用すると考えられている。

 IgG4関連疾患におけるIgG4の役割はまだ未解明である。しかし、IgG4関連疾患の病変部では、制御性T細胞(regulatory T cell; T reg)やFOXP3の発現が認められ、Th2タイプのサイトカイン産生が優位であると報告されている3)。また臨床的にも、アレルギー性鼻炎や気管支喘息の合併が認められる。これらのことから、TregによるTh2サイトカイン産生が亢進し、B細胞でのIgG4産生増強と、病変局所でのTGF-βの産生の誘導が生じ、結果として高IgG4血症、病変部の線維化とアレルギー症状が生じている可能性が示唆されている。

松井祥子. アレルギーの臨床 33;483:2013より引用

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